家づくりコラム

古民家リノベーションの実例集!
おしゃれな外観や間取りを紹介!後悔しないポイントも

河島 康
2025.1.28 更新 / 2025.1.24 公開

古き良きデザインや素材を活かしつつ、新たな価値を生み出せる古民家リノベーション。思い出を残したり新築にはない雰囲気を出せたりできるため、古民家リノベーションを選択する方も増えています。

この記事では、古民家リノベーションの魅力や風景のある家が手掛けたリノベーション実例集、後悔しないポイントについてご紹介します。費用相場や利用できる補助金も含めてお伝えするので古民家リノベーションを検討中の方、事例が知りたい方はぜひ参考にしてみてください。

古民家リノベーションとは

古民家リノベーションとは、昔に建てられた日本家屋を現代の暮らしに合わせて改修することです。古民家ならではの趣を残しつつ、現代的な設備やデザインを取り入れることで、ライフスタイルに合った快適な住まいを実現できます。古民家に明確な定義はありませんが、一般的に築50年以上の民家を指すことが多いです。老朽化などの問題を抱えている場合でも、古民家リノベーションを通して適切な補強や改修を行うことで、さらに数十年と長く住み続けられるようになります。

古民家リノベーションの魅力・メリット

古民家リノベーションの魅力は、経年変化した元の素材を活かすことで、新築では味わえないレトロな空間を創出できる点にあります。古い部分の風合いを残しつつ、機能面は現代のニーズに合わせて更新できることが大きな特徴となります。また、固定資産税は築年数により変動しますが、古民家であれば資産価値が下がっているとみなされるため、新築での建て替えに比べて固定資産税を抑えられることも古民家リノベーションを行うメリットです。

古民家・日本家屋のリノベーション実例集

風景のある家が手掛けた古民家・日本家屋のリノベーション実例集7選をご紹介します。

古民家・日本家屋のリノベーション実例集①

築100年の持つ力強さを最大限に蘇らせたリノベーション

岡山県真庭市新庄村 /木造1階建て/築100年
リノベーションにあたりお客様からの要望:
  • 100年前の古屋だから新築に立て直したい
風景のある家が設計したリノベーションの内容:
  • 小屋裏の梁が、新築よりリノベーションの方が良い建物になると判断し設計
  • 古い木材と新しい木材を活用した設計
  • 大きな柱を活かした設計
  • 家族が集まれる間取りの設計(極寒の地域で寒い建物だったため、実家でもあるこの家に年末年始誰も帰ってこなかった。それを温かく広々した建物にリノベーションすることで、散らばった親族が年末年始を楽しみに集まるようになった。)
古民家・日本家屋のリノベーション実例集②

ほとんど使っていない南西角のタタミ続間を家族室にリノベーション

岡山県赤磐市/ 木造/築100年
リノベーションにあたりお客様からの要望:
  • とても日当り良くいい場所だが、ほとんど使っていないので何か活用したい
風景のある家が設計したリノベーションの内容:
  • 100年以上の古民家であるため力強い構造材を見せようと考えたが、敢えて構造は出さずに新しい空間を設計
  • 間接照明や塗り壁に仕上げて明るく温かい雰囲気の家族室に設計
  • 明るく和庭を眺めれるように設計
古民家・日本家屋のリノベーション実例集③

よくある畳の間がある民家を和モダンにリノベーション

島根県隠岐の島/ 木造2階建て/築35年
リノベーションにあたりお客様からの要望:
  • 細かく仕切られた部屋を広々ワンルームにして暮らしたい
風景のある家が設計したリノベーションの内容:
  • 南にあった玄関を北西へ移動、北にあった台所を南へ移動などして全く異なる間取りへ変更した設計
  • 断熱のグレードを上げて冬場でも寒くない仕様に設計
  • バリアフリーの設計
  • 広々と快適な浴室と使い勝手良いオーダーキッチンの設計
古民家・日本家屋のリノベーション実例集④

勝手口と裏庭があるところを小さなケーキ屋さんにリノベーション

岡山県玉野市 /木造/築100年
リノベーションにあたりお客様からの要望:
  • 勝手口と裏庭があるところを小さなケーキ屋さんにしたい
風景のある家が設計したリノベーションの内容:
  • 使っていない裏庭を魅力あるアプローチに設計した
  • 築100年の特色も醸し出すために一部既存の梁を見せる設計
  • 民家の雰囲気を感じさせない外観・外壁にデザインした設計
古民家・日本家屋のリノベーション実例集⑤

民家の一階部分のみのリノベーション

岡山県倉敷市 /木造2階建て/築35年
リノベーションにあたりお客様からの要望:
  • 細かく仕切られた個室と和室、台所をワンルームにかっこよくしたい
風景のある家が設計したリノベーションの内容:
  • リノベーションを感じさせないくらいのモダンなインテリアの設計
  • バリアフリーの設計
  •  間接照明を多用してホテルライクな設計
古民家・日本家屋のリノベーション実例集⑥

二世帯住宅にリノベーション

広島県府中市 /木造2階建て/築50年
リノベーションにあたりお客様からの要望:
  • 二世帯が住む明るい空間にしたい
風景のある家が設計したリノベーションの内容:
  • 築50年増改築を繰り返してきた古民家のため構造補強の設計
  • 寒く暑い民家だったため窓をペアサッシュ、断熱、無垢材を使い温かい設計
  • どの場所にも光が差し込むような間取りの設計
古民家・日本家屋のリノベーション実例集⑦

中古物件を購入してリノベーション

岡山県岡山市 /木造2階建て/築35年
リノベーションにあたりお客様からの要望:
  • 子供達と一緒に遊んだりお酒を飲んだりできる玄関土間がほしい
風景のある家が設計したリノベーションの内容:
  • リノベーションコストを抑えるため壁と床をベニヤ仕上としたミニマムな空間の設計
  • 限られた面積をより広く感じさせるために玄関土間とガラスで仕切り広がり感を設計
  • 細かく仕切られた続間をワンルームに設計

古民家リノベーションを行う際の後悔しないポイント・注意点

古民家リノベーションで後悔のないよう仕上げるためには、以下のポイントや注意点を押さえながら計画を立てると良いです。

物件(土地)選び

現在古民家を所有していない場合は、まずは物件(土地)選びが重要です。物件(土地)選びでは、隣地との境界線や建物の配置を確認します。距離が近すぎたり境界が曖昧だったりする場合、近隣トラブルに発展する可能性もあるので事前に把握しておきましょう。雑草や木などの障害物もチェックし、将来的な維持管理や手入れのしやすさなども考慮すると良いです。

周辺環境・地域条件

良い物件が見つかっても、交通アクセスが悪かったり、生活圏にスーパーがなかったりすると、住みにくさを感じ、後悔するかもしれません。また、地域によっては生活ルールが細かく決められている場合もあります。こうした点を知らないと馴染めず、孤立するリスクが考えられます。そのため、通学路の安全性や環境騒音といった周辺環境、ゴミ出しルールや住民との交流などの地域条件を事前に把握することが重要です。これにより、古民家リノベーション後に起こりうる後悔を防ぐことができます。

古民家の現状の把握・保存状態

既に古民家を所有している場合は、リノベーションを開始する前に建物の状態を正確に把握することが重要です。購入を検討している場合は、築100年以上経過している古民家も珍しくないため、保存状態を綿密に確認することが不可欠です。具体的には、シロアリによる損傷の程度、ひび割れ、外壁や屋根の痛みなどをチェックしておくと、予算目安やリノベーションプランが明確になります。また、元の内装を活かしたい場合は、柱や梁、欄間の状態を確認し、使えるものを選別することで、リノベーション後のデザインがイメージしやすくなるでしょう。

ライフスタイルに合わせた間取り設計

将来的なライフスタイルの変化を考慮しながら間取り設計を行うと、「部屋数が足りない」「生活動線が不便」といった古民家リノベーションで起こりがちな後悔を防ぐことができます。例えば、子どもの成長や老後を見据えて設計することをおすすめします。明確な将来プランが決まっていない場合でも、柔軟に使える部屋や収納スペースを設けておくと、変化に対応できる住まいになります。

具体的なデザインを決めておく

古民家リノベーションの後悔として、完成後にイメージと違うと感じてしまうことがあります。これを避けるため、素材や色合い、照明の配置までデザインを細かく決めておきましょう。古民家リノベーションをおしゃれに仕上げる際、途中でデザインやテーマ変更をしたたくなることがありますが、完成後の後悔を防ぐには具体的な全体像を決定したうえで、リノベーションを開始すると良いです。

耐震・断熱・防音対策

古民家は現代の住宅に比べて耐震性や断熱性、防音性が劣るケースが多いです。特に耐震性が不足している場合、災害時のリスクが増え、安全面での不安が高まるため、耐震補強工事を検討しましょう。また、断熱性や防音対策として断熱材や防音材、二重窓を設置すると、外の音が気にならなくなったり室内の温度を保てたりして、快適な住環境を手に入れられます。

配管・配線工事

古い配管は漏水や腐食の原因になる可能性があり、電気配線も安全性を確保しておかないと火災リスクが高まります。配管・配線工事には費用と時間がかかるので、「コストを抑えたい」「古民家リノベーションを早く終わらせたい」という人は使える状態か事前に確認しておくと良いです。

古民家ならではの古材を活かす

古民家には、独特の味わいがある古材が多く使われています。古民家リノベーションを行う際は、古材を活かしながらモダンデザインや機能性を取り入れると、伝統と新しい技術が融合されたおしゃれな空間に仕上がります。また、伝統的な意匠が用いられた梁などをあえて残すことで、古民家らしい風情と建物の歴史を感じることができます。「歴史的価値の高い木材を活用すればよかった」という後悔をしないよう、慎重に設計することが重要です。

費用・予算の管理、資金計画を明確にする

想像以上に老朽化が進んでいたり、見えない部分に欠陥があったりすると予想外の費用がかかってしまいます。

古民家リノベーションの費用面での後悔を防ぐためには、工事の途中で発生する追加費用や必要な修繕作業の範囲をしっかりと見積もり、予算オーバーしないよう明確な資金計画を立てると良いです。また、最初に十分な予算を確保し、余裕を持たせておくこともおすすめです。

業者の選定

古民家リノベーションは専門的な知識と技術が必要なため、経験豊富な業者に依頼しましょう。業者選定の際は、古民家リノベーションの事例や口コミから信頼性を確認すると良いです。また、現地見学会に参加して実際の雰囲気を体感することもおすすめです。自分の目で細部を確かめると完成形がイメージしやすくなり、後悔のない古民家リノベーションにつながります。

古民家リノベーションの費用・相場

古民家リノベーションでは、構造や配管などの修復が必要となるケースが多いため、通常のリフォームに比べて費用がかかってしまいます。相場は、建物の状態や使用する材料、設備グレード、リノベーション範囲などに左右されますが、最低300~500万円程度はかかることが一般的です。以下では、部分的なリノベーションとフルリノベーションを行った際の相場についてお伝えします。

部分的なリノベーション

部分的なリノベーションで最低限の改修を行った場合、相場は約300万円〜500万円程度となります。例えば、外壁工事や屋根工事では約50万円〜350万円、柱の補強を行う耐震工事は約150万円〜200万円、キッチン周りの工事は約50万円〜150万円となっており、組み合わせやリノベーション内容によって費用は変動します。

フルリノベーション(スケルトンリノベーション)

フルリノベーションとして内装や設備を一新した場合、相場は約1000万円〜2000万円程度となります。内訳には、断熱工事の約100万円〜300万円、浴室工事の約100万円〜150万円、トイレ・洗面所工事の約20万円〜50万円が含まれることが一般的です。また、将来に備えてバリアフリー化をすると、手すり設置で約10万円〜50万円、床のフラット化で約50万円〜150万円程度が発生します。

上記リノベーション費用は目安であり、地域や施工業者、具体的な工事内容によって大きく異なるため、正確な見積もりを得るためには専門業者に相談することが推奨されます。古民家リノベーションについては実績が豊富な風景のある家にご相談ください。

古民家リノベーションで利用できる補助金

古民家リノベーションで耐震補強や省エネ化、バリアフリー化などを行うと、内容に応じて自治体や国から補助金を受け取ることができます。

耐震

災害に強い国土づくりが国策として進められているため、耐震補強を行うと自治体から補助金がもらえます。例えば、岡山市では耐震診断費用の一部を補助したり、基準を満たす木造住宅に対して耐震改修内容や世帯に合わせた補助金を提供したりしています。木造建築物である古民家をリノベーションする際、長く安全に住むうえで耐震補強は不可欠です。そのため、各自治体が提供する補助金制度の内容を確認しておくと良いです。

参照:岡山市「木造住宅の耐震診断・耐震改修補助制度について

省エネ・断熱

カーボンニュートラル実現に向けた住宅省エネ化支援として、高断熱窓の設置や給湯器の取り換えなどの改修工事をすると、設置機器に応じた補助が受けられます。例えば、高性能の断熱窓は最大200万円、高効率給湯器は最大20万円の補助が適応されます。また、給湯器の設置に伴い蓄熱暖房機や電気温水器を撤去した場合には、追加の補助金を受け取ることができます。そのため、古民家リノベーションを計画する際には、これらの工事を同時に行うことがおすすめです。

参照:経済産業省「令和6年度補正予算案におえる省エネ支援パッケージ

バリアフリー化

介助が必要な高齢者や障害者がいる場合、介護保険でバリアフリー化工事費の一部を賄うことが可能です。住んでいる地域によっては独自の補助制度を設けている場合もあり、その内容や条件は自治体ごとに異なります。例えば、岡山市では「岡山市すこやかリフォーム助成制度」として最大6 0万円が補助されます。ただし、補助対象となる工事は標準的仕様に限られており、補助を受けたい場合は事前に詳細を確認しておきましょう。

参照:岡山市「岡山市すこやか住宅リフォーム助成制度について

長期優良住宅化

国土交通省が実施する長期優良住宅化リフォーム推進事業では、既存住宅の性能向上を目的としたリフォーム工事に対して補助金が支給されます。また、長期優良住宅にするためのリノベーション工事を行うと、「住宅特定改修特別税額控除」の対象となり、一定額の所得税控除が受けられます。ただし、控除を受けるためには、総額50万円を超える住宅耐震改修や省エネ改修を行う、工事日から6カ月以内に生活の拠点にしている、など条件を満たす必要があります。

参照:国税庁「No.1227 耐久性向上改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)

その他減税制度

古民家リノベーションを行う際、耐震補強や省エネ化、バリアフリー化などの改修工事を実施することで、減税措置の対象になる場合があります。例えば、バリアフリー化をした場合、控除対象額は最大200万円となり工事費用10%分の所得税控除が受けられます。それぞれの減税制度を適用するためには、各種条件や定められた基準を満たす必要があるので事前に確認しておくと良いです。

※上記でご紹介した補助金、減税制度の適用可否については、必ず各制度の公式サイトや関連窓口に直接お問合せください。

古民家リノベーションはDIYできるのか?

古民家リノベーションは、DIYで行うことも可能です。自分好みにゼロから作り上げられることがDIYの大きな魅力ですが、古民家には構造的に複雑な部分が多く存在します。耐震補強や配管工事、古材の見極めなど専門的な知識が求められるため、DIYで行った場合、完成後に後悔してしまうケースも少なくありません。また、材料費や廃棄費用が予想以上に高くなる、耐久性に問題が生じる可能性がある、法規制に適合しない改修を行ってしまう、などのリスクがあることから、後悔のない古民家リノベーションを行うためには専門業者へ依頼することがおすすめです。

まとめ

今回は、古民家リノベーションの魅力やリノベーション実例集、後悔しないポイントについてお伝えしました。古い日本家屋を現代の暮らしに合わせて改修する古民家リノベーションでは、新築にはない趣を味わえるといった魅力があります。後悔しないためには、建物の状態や詳細費用の確認など、完成後がイメージできるよう事前にしっかりと計画を立てることが大切です。DIYも可能ですが、専門知識を要する古民家リノベーションでは失敗してしまう可能性もあるので、なるべく業者に依頼すると良いでしょう。

風景のある家では、家に込められた思いを大切にした古民家リノベーションを手掛けています。施工主様との打ち合わせを重ねながら、何十年先も住み続けられる空間づくりを行うのでぜひ一度ご相談ください。


執筆 風景のある家.LLC 主宰
河島 康Kou Kamashima

1970年栃木県生まれ。福山大学工学部建築学科卒。株式会社丹羽建築設計事務所、株式会社FORM設計(チーフディレクター)、株式会社3.3/Design(設計チーフ/専務取締役)を経て、2012年に風景のある家を設立。FMレディオモモ、RSKラジオなど多数出演。2004年から10年間福山大学工学部建築学科非常勤講師を経て2020年より岡山科学技術専門学校非常勤講師とし現在に至る。

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